壊疽した旅行者 四/ただのみきや
 
息よ

ゆらゆらと光を含み

ゆるやかに 雪は 雪であることをやめ

それでも水は見え ふれると滲み うすく纏わり

やがて消える 目覚めの夢のよう ふれても気づけないまま

面影と 空(から)の空(そら) ほかになにもなく

伏せたまなざしの先 ひらかれた日差しの扇に

中空のおぼろな影 天地の呼吸にこころ潤み

ほどかれて漂い上るものたちよ

ああこの土嚢のからだから煙のかいな

せめて送らせよ 生者のことばの境まで





うす暗い雨の朝
黒々した傘の群れに混じり
少女の差したピンクの傘
気の早い朝顔
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