愛の翼/丘白月
 
あなたの手紙を
千切って投げた
涙でかすんだ夕暮れに
妖精があらわれて
風の中で大事に集める
やがてウロコ雲のように
空に並べて言った
この手紙は返事を待ってるよ
でもあの人はもういない
遠い国へ行ってしまった
さよならを言う時間もなく
あの人は鳥のように
優しく囁いて
私は翼があることを知った
妖精が耳元で風のように言う
いまなら飛べるよ
胸も足も震える
翼があることを知って
ほんとうは怖かった
あなたの心の中の巣に
私の場所があるのかと
妖精はもう一度言う
大丈夫だよ
温かい風が身体を突き抜けていく
手紙の返事を心に書きながら
渡り鳥の群れについていく
妖精が背中を押して言う
綺麗な翼だね

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