前夜の鎮魂歌(レクイエム)/大町綾音
 
死の女神が微笑む、
”どうか明るい唄を残してください、”

死の女神が唱える、
”わたしはすべてを等しく愛するもの。”

死の女神が歌う、
”ああ、死は安らかな眠り。安らかな眠り。”

死の女神が口づけする、
 すると、その者は光のようになって消えていく……。

――死の女神よ! 俺たちの悲しみを、
 悲しむ資格を返してくれ、

どうか、悲しむ権利を、
 この”人間存在”という悲しみを、

奪われてしまったそれを、
 誰かに奪われてしまった。――死の女神よ!

あなたは優しく清潔だが、
 同時に冷たく、残酷でもある。死の女神よ!

ああ、お前に……、
 ありとあらゆる生命を司る権利があると言うならば!

死の女神が優しく微笑む、
”どうか明るい想いを残してください、”

死の女神が優しく唱える、
”わたしはすべてを等しく愛するもの。”

死の女神が歌う、
”ああ、死は安らかな眠り。安らかな眠り。”

死の女神が優しく口づけをする。
 すると、その者たちは光のようになって消えていく……。
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