銀 化/塔野夏子
 
立ってゆくとき
内へ 内へと
深く訪うものがある

錆びた日々
うち捨てられた日々
その感触を
消えない傷にかなしく歌わせて

重い夜に思う
深く深く埋もれた何かが
いつか幻よりも美しい
多彩な光を放つことを
古代硝子の銀化のように

今はただ
あらゆる方向を指し示す
矢印たちのあいだをすり抜けながら
はてしなく自由な
精神のダンスを試みる
(透明な帆をあげて進んでゆくもの)

遠い過去のこと
あるいは未来のこと
救いは思いがけないところから
けれど気づかれないかたちでもたらされる
と 誰かが云った

あの日の歌が回遊してくる
おなじ言葉に
あらたな
より広く深く響く意味を帯びて


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