銀 化/塔野夏子
 
外へ 外へと
言葉が拡散してゆくとき
内へ 内へと
深く問うものがある

あの日の歌が回遊してくる
おなじ言葉に
あらたな意味を帯びて

今はただ
あらゆる方向を指し示す
矢印たちのあいだをすり抜けながら
かぎりなく自由な
精神のダンスを試みる

聖者が来ようと来まいと
救いはもたらされねばならない
と 誰かが云った
遠い過去のこと
あるいは未来のこと

外の混乱
内の混沌
そのはざまから透明な帆をあげて
進んでゆくもの

数知れぬ引き裂かれた叫びと
沈鬱な だが不思議に美しい旋律が
夢の中に幾重にも谺した

外へ 外へと
言葉が旅立っ
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