葉桜が揺れる/朧月夜
そして、それはわたしを健やかにもし、
病にもしてしまうのだろう。
今年は桜前線、という言葉をあまり聞かない、
なぜだろう?
問うまでもないことだと、
心では承知していながら、
問いという問いに、顔を背けてしまう。
希望はあふれていましたが、
希望は目に見えないものなのでしょう。
心の奥底にも、言葉の奥底にも、
それは滅多に表れてこない。
わたしがわたしであるということの証明を、
わたし以外にしてくれる者はいなかった。
それが不幸だとは言うまい。
人のすべてがそうなのだから。
時間は果てしなく続いていく、
それを追いかけても、追いかけても、
追いつくことは出来ないのだろう。
何もかもを忘れ去ったころに、
ただ葉桜が人もなくひっそりと揺れている……
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