ふた/385
並べれば並べるほど
からっぽになるので
ふたをしてまわった
飲みかけのグラスにふたをした
冷たい水は呼吸できなくて
苦しいよぅ助けて
って声あげるけれど
聞こえないふりをした
読みかけの本にふたをした
文字たちは手足を動かせなくて
ここから出せ!自由に踊らせろ!
って暴れているけれど
響かないふりをした
目覚まし時計にふたをした
長針と短針は走れなくなって
かけっこできないなんてつまらない
ってふくれているけれど
見えないふりをした
スピーカーにふたをした
音符たちは行き場を失って
目がまわぁる気持ち悪いよぅ
ってうずくまってしまうけれど
知らんぷりをした
ふりをすればするほど
ますますからっぽになるので
ふたは投げ散らかしてしまった
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