迷いの肖像/xxxxxxxxx
 



庭の白薔薇をねぢ切ったら血が出た。そのような音が出た。こころのままになぞるピヤノの鍵からは、やはりうつくしい音が出るのだが、それはこのように歪んでしまう。天上のしらべからは遠く、さりとて地獄の渦というわけでもない。たやすく手折れそうに細く、しかしてヒトを内側から燃やす毒のような激情でもある

うつくしいものを描きたい。そう想い狂う我が身がもっとも醜い。そのような矛盾に苛まれたまま、ゆっくりと爪先から凍りついてゆくのを感じる。これがゆびの先まで届くまで、あとどれくらいの猶予があるだろう?その最期の瞬間まで奏で続けてやろうと思う

そう思って描くのは、吾輩自身なのかも知れない。ひとを激しく愛し、それと同じだけ憎悪し、たくさんの罪の上に、それを押し潰すくらいの栄華を築こうとしている。ひとからうばい、それ以上にひとに与えたい。なにものにも染まり切れず、いつでも迷いの中で苦しみのたうっている。これはその、肖像なのだ
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