今日、明日/墨晶
 


暗闇で自転する緑の林檎

湯気立つ紅茶茶碗

見ようとする度すがたを変えるものたち

事物は描かれることによって見失う


彼誰刻前

デスクライトの灯りの下(もと)

オレンジの果皮の残り馨に似た

読まれることのないブルーブラックのことばを万年筆は綴る


交わし合った無名の象徴よ

そこになかったものたちは

当然懐かしい


そうだ あきらかに我々は存在しなかった

そして これからもだ




戻る   Point(2)