ボール/まーつん
僕は歳をとった。
もちろん生きとし生けるものすべては、常に老いているわけだけれど、ある時から、肉体はそれ以上成長することをやめ、ゆっくりと衰え始める。空に放ったボールが高く高くあがりながら、やがてゆっくりと天に向けた加速をやめ、束の間静止し、再び地面へと還っていくように。その飛距離は生きた時間に比例し、生まれて間もなく死ぬ者もいれば、百の齢を重ねてなお生きる者もいる。どちらが幸せであるにせよ、時は優しく、そして残酷だ。
ボールが再び投げた者の手元へ帰ってくるかどうかはわからない。そもそも、ボールを投げた者は誰だろう。神様? 高みに至ったのは、肉体だけではなく、心もまた。喜びであ
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