桃の花の妖精/丘白月
 
桃の花が咲いた
雛人形の頬の色
お姫様の唇のような

二人並んで
庭の桃を見てる
狭い箱から出されて
眩しい世界を
少しづつ分かち合う

桃色に透ける羽根が
いくつも飛んでいる
空気までも春の色になる

月夜を待って
二人は妖精に言葉を貰う

小さな蝋燭が
わずかに残る雪に
桃色の影を映して揺れる

夜空からゆらゆらと
百人一首が降り注ぐ
永遠に忘れないでと
魂が語る文字の宇宙

かつて愛を誓った二人の
雛人形は一枚づつ
愛を拾ってキスをする

月灯りの下で
桃の花びらを抱いた妖精が
優しく囲んでいた


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