海風/朧月夜
緑いろの丘々を撫ぜながら
思いがけない海からの風は
波たちの起こすさざめきをともなって
私たちの陽溜まりへとどけられる
草葉のかけらを宙に舞わせながら
精霊たちを目ざませながら
何ものかに憑(つ)かれたように
遠い過去での記憶からのように
高みにすわっている私たちの心へ
伝わってくる春のつよい風は
眠りかけていた私らへの暗示に
かるい嗚咽(おえつ)をきかせようとする
私たちの生きているのが
私たちのせいなのでなく
何かほかのもののせいというように
神の至福に交わらない者のように
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