壊疽した旅行者 一/ただのみきや
 

葬列は進み
例祭は執り行われる
幼子のように風は走り
不意にそこで老いたのか
影と光の市松模様
かごめかごめの思考の中
とても懐かしい
そんな死
濡れるような燃えるような
青いネガフィルム
寝落ちするように出かけて





秋に海を渡った羊の群れが
春の牧童に連れられ帰って来た
海より青い草原
窓枠の空を横切って
芯まで白い毛だけの
太陽に膨んだ羊たちが
群れ連なって
地平の向こう山々を覆う
風の呼び声は透きとおり
遠く 力強い





              《2020年3月21日》








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