壊疽した旅行者 一/ただのみきや
破傷風
この世界を憂い悲しむ心は知らぬ間に
蜘蛛より細い糸で繋がっている
見たことも触れたこともない天の何処かと
教育によって与えられたのではない最初からあった
見えない傷口のような器官をひりひり欹てて
楽天家の魂は地上の地獄を彷徨っている
互いの重い荷物を上手く隠して軽やかに
自らの血の足跡で印を押し詩文を諳んじるように
人生を綴る 相手のいない誓約書へと
萎えて開かない翼を濃い影として引きずりながら
自分で飼いはしないが
熱帯魚の水槽を見るのが好きだ
静かで美しい観賞に耐えうる世界
わたしが神なら人など創らなかった
ましてや自由意志なんて
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