氾濫と反乱/こたきひろし
 
現実だったのかそれとも非現実だったのか

その思い出は曖昧でした
曖昧でぼんやりしていながら
自分の知らない内に
いつの間に記憶の紙面に刷り込まれていました

私はまだ小学校に通っていました
五年生か六年だったような気がしています

家の近くには川が流れていました
歩いて数分もかからない所でした

実家は山間の辺鄙な場所にありました
旧くて粗末な農家には七人が棲んでいました
両親と兄が一人姉が三人
そして私でした

川が近くに流れていたのでいつも絶えず水の音が聞こえている筈でしたが
すっかり耳が慣れてしまい無意識になっていました

普段は水深も浅くて川幅も
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