行方知れずの抒情 五/ただのみきや
んだまま内海を漂って
とても簡単なトランプ遊び
そこに伏せてある何枚かのどれか
それでジェーン・バーキン
紋様は列をなして踊る
ウェーブしながら
少しずつ異なるものたちが手を繋ぎ
どこへ往く?
螺旋を上って それとも下って
音符から孵った音は
文字を纏う前の言葉より原始的
蟲のような生きものたち
思考の内外を素通りする
薄曇りの中の鳥の群れ
かと思えば騒がしい
オンコの垣根に潜って喋りまくる雀たち
インストゥルメンタルか
知らない言葉がいい
ものを書く時には
*オンコは常緑樹のイチイのこと
比喩
詩文には始まりと終わりがある
人生と同じように
だが詩は言葉の外に広がりを持つ
そう感じることに
証明はいらない
《2020年3月15日》
戻る 編 削 Point(2)