Birthday Cake/ツチヤタカユキ
娯楽は、読書くらいしかなかった。
「ムショでどんな本、読んだ?」
刑務所から出たばかりのシオンに、門脇が尋ねた。
「うたかたの日々」
「うたかた?何だそれ?どんな話?」
「肺に水蓮の花が咲いて、死ぬ女の話だ」
「へー」
門脇は、しばらく考え込んだ後、笑みを浮かべながら、こう言った。
「俺だったら、お腹の中で、マリファナを栽培するけどな。
絶対に、サツにバレねえぞ?」
パンツ一枚の門脇は、腹の肉が、膨らんだモチのように、前方に突き出している。
ドラッグをやった後は、触覚がちぎれた虫の飛行のような、歩き方しか出来ない。
足元から伸びた影が、巨大な落と
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