Birthday Cake/ツチヤタカユキ
 
の破片が、心臓にかすり傷を付けていく。


シオンは、運び屋の仕事の途中に、駅の公衆便所の障害者用トイレに入る。
そこは、世界中の誰の視界にも、入らない場所。
汚れた床の上に座り込む。シオンがそのまま、床に脱ぎ散らかした靴。ブラックコーヒーの空き缶が転がった床には、トイレットペーパーの切れ端が、こべり付いている。
ここに居れば、誰にも邪魔されない。誰も自分を傷つけない。巨大な母の胎内に居るような感覚。
口の中が、乾いてる。砂漠の中に舌があるみたいに感じる。

『鏡とジャンケンしてたらさ、勝てたわ』
という、門脇から来たLINEから、察するに、あいつは真っ昼間から、コカインをやっ
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