Birthday Cake/ツチヤタカユキ
 
ベランダから見える、コンクリートを空に敷いたような曇天。
シオンは、あそこに衝突して、粉々になって、死んでいきたかった。
門脇はその隣で、自分の影に向かって、「お前もやれよ」って、注射器を、影が伸びた床に向かって打っていた。
命をこんな風に、粗末にしながら日々を過ごしてる。まるで、人間の粗悪品。

目覚めたシオンが見る、自分が鏡に映った姿。
知らぬ間に口髭が、唇の上に暖簾のように伸びていて、それは、もう数日が経過している事を表していた。
カップラーメンを食おうと思って、鍋を火にかけたまま、その事をすっかり忘れて、水はお湯に代わり、そのまま全部、蒸発して消えた。

刑務所の中の娯楽
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