Birthday Cake/ツチヤタカユキ
は、「とりあえず、うちに来てくれ」と言い、電話を切った。
シオンは、急ぎ足で歩く。もう一秒も無駄になんか、してられない。
季節は三月で、桜が咲いていて、その横を横切るシオンは、もう、それを一度も見上げる事も無い。そんな暇なんか無い。
時計の針ですら、秒針と分針が追いかけっこしてる。
門脇が暮らすマンションのドアには、鍵が掛かっていなかった。
そのドアを開くと、もう後戻り出来ない。
人生には、そんなドアが幾つも存在する。
その時、シオンが手を掛けたドアも、その一つだ。
シオンは、どんどん自分が壊れていく感じがした。それを修理しないまま走ってる。たくさんの、部品を落としなが
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