深海の寝床で/ホロウ・シカエルボク
なにもない
なにもない
なにもない部屋を塗り潰して
深海の色に変換した
息の続く海底で沈んだまま
太陽に焼かれる夢を見る
三月
手のひらのなかで
なにかが
握り潰された音がしたけれど
ひらいたそこには
欠片ひとつなく
水晶体にまで
無音が染み込んでくる
思考は汗のように滲み
ああ、だが
それは
肉体の存在をあやふやなフォーカスにしてしまう
ここにいる、と
示すべき床がなくなる
あぶくが見え
窒息の予感がした
観念的な死は
継続する限り
本当の死よりも始末が悪い
深海の色にしたのは、おそらく
匿名性を強くするためだ
泳ぎましょうか
浮力はないけ
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