知らない話/チアーヌ
 
知らない駅の改札を出ると右に曲がった
四車線の道路があり
階段がいくつもの方向に分かれている
大きな歩道橋を渡った
焼肉屋からは
肉の焼ける匂いが流れ出ていた
これが鰻だったら
たぶん帰っていた
肉が焼ける匂いは
わたしの気分を邪魔しなかった
焼肉屋の向かいのコンビニに入った
後方の冷蔵庫から
ミネラルウォーターのペットボトルを取り出す
蓋を開けると床に中身を零した

知らない夜に高架下のガードレールを跨いで
ぬるい川に潜りゆっくり遡った
向かい合う人の顔がわからない
あなたは誰ですか?
この際だから
「月がきれいですね」
月ってそんなにきれいかな
まあいいや
これも何かのご縁

何度も何度も同じページを捲る
最後まで読んでないけど
もういらないからあげるね
その本


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