ばかなねずみ、りこうなねずみ/はるな
みは長生きだが、一生に一度しか子どもをつくらない。だからいつもちょうど同じ数。ぼくたちはわあっと増えてはわあっと死んでいき、いつもどこかで誰かが転んでいる。でも走るんだ(そうしないといけないわけがどこかにあるはずだけど?)。
あるときりこうなねずみが言った、
「あしたなにもかもが死ぬんだ」
りこうなねずみたちは頷いて、「あした」のために準備しはじめた。いちばん愛するねずみの横で死ねるように。いちばんきれいなおふとんで死ねるように。ひもじくもなく、寒くもなくあしたを迎えるために。
ぼくたちはーばかなねずみたちはー、悲しんだ。7分くらい、悲しんだ。そうして悲しみおえると、また走りだした。あしたが来る前にも、ぼくたちのうちの誰かがーあるいはぼく自身がー死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。きのうや、おとといと、同じことだ。そうして、今日がきのうやおとといと同じなのだとしたら、あしただって、今日のようにすばらしい一日のはずなのだった。
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