行方知れずの抒情 四/ただのみきや
 

血などとっくに吐き尽くし
瞬きもせず瞳孔も動かない
なにも見てはいない
光もその向こうにあるものも





彼女がスカートの裾を少しだけ持ち上げる
パステルのスニーカーと白い靴下
         ――今はまだこれだけ
三月のくすんだ空の向こう
擬人化された春が待っている
           たぶん きっと




                  《2020年3月8日》









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