行方知れずの抒情 四/ただのみきや
糸
絡んだ糸も根気と時間さえあれば解くことができる
だが砂粒のように固く結ぼれてはどうしようもない
ギミックとトリックを切り捨てれば 見えるか
見えないか 糸は揺れ
微風にも抗えず 水面に触れることを躊躇(ためら)いながら
光に捉えられた一本の白髪の控え目さ
木乃伊
雪が再び覆う
世界は白紙に戻る
だがそれは隠蔽に過ぎない
純白の魔法も解けて流れ
あるのは永い汚辱の歴史
老廃物にまみれた古い世界
ウエディングドレスや白無垢を
数万回 数億回も着ただろうか
ベッドの隣に眠っているのは木乃伊(ミイラ)
知っていて娶ったの
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