知らない誰かが知らない誰かを/こたきひろし
 
知らない街を夢の中で歩いていた

背後から声をかけられた
ような気がした
立ち止まって振り返ると
自分の知らない誰かが知らない誰かと
偶然再会した様子だった

何だつまらない
自分の知ってる誰かが
声をかけてくれたんじゃなかった
と女は思ってしまった

誰か呼び止めてくれないかな
知ってる誰かでなくても
かまわないから

知らない誰かでもかまわないから
むしろ知らない誰かがいい
ゆきずりの人でもかまわない

勿論
それは男
勿論
見た目が第一の条件

私のこの寂しさを
いっとき慰めて
埋めて欲しい

知らない街を夢の中で歩いていた


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