キンカンの妖精/丘白月
小さな赤い長靴を履き
キンカンの実を大事に抱え
嬉しそうに歩く女の子
子供には大きな袋に
たくさんの金柑が揺れている
頬のようなオレンジ色
太陽の赤ちゃんのような
小さくて丸くて金柑が
生まれたばかりだよと言っている
歩くそばから真冬の歩道に
金柑の香りが落ちていく
風が冬の街に香りを運ぶ
金柑の妖精が
女の子の肩に座って
一緒に香りを置いていく
妖精は小さく小さく金柑を創った
子供の小さな笑窪のように
無限の喜びと希望を
太陽の種に詰めて
雪で凍った街路樹を
夕日がオレンジ色に染める
街中を金柑の樹に変えていく
女の子と妖精が
光の中に入っていく
妖精の国へ
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