行方知れずの抒情 三/ただのみきや
涙
厭きて見上げた雪空から
狙いすまして瞳に降りて
澄んだ涙を装って
誘発するものたち
悲しみに喜び
タマネギや目薬
夏の深い井戸 あなたは
美しいから美しい
詩のようで信頼できない
猿と蛙
お山には大将がいた
猿山のボス猿だ
人が思うほど威張ってはいない
ボスにもいろいろ苦労はある
腕力や威嚇だけでは子分の心は離れるばかり
雌猿たちのご機嫌をとったり子猿たちに餌を分けたり
こまめな気遣いも必要だし
毎日毎晩山の頂から雄々しく美しい叫びを発信したり
弛まぬ努力の積み重ねで地位を守り続けていたのだ
猿は内心思った
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