行方知れずの抒情 ニ/ただのみきや
梯子
高く伸びた梯子があった
青い空の真中に突き刺さり梯子は行き止まる
果て無きものに接した微かな上澄み
触れていることすら定かでなはない
その虚無の厚みの中
降り立つ場所もなく
冷たすぎる大気と眼裏まで覆う光ばかり
鳥のように翼を持ってはいない
ただそこにしがみ付いて居続けるか
登って来た梯子を一段ずつ下って往くか
ロケットが飛ぶ時代
高く伸びた梯子がある
天から降りて来た梯子ではなく
地から伸ばした梯子だった
己の殻を破って魂の飛翔を待つ
そう言った人たちの
干乾びた抜け殻一つ残っていたためしはない
消失
煙る海原の飽く
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