月光螺鈿の庭で/塔野夏子
月光螺鈿の庭で会おう
このかなしみは
悲しみでも
哀しみでもなく
ただ透きとおるばかりだから
ふたしかさの中でしか
結べない約束を
たぐりよせるほかに術はないから
月光螺鈿の庭で会おう
淡いもの 消えいりそうなものばかりを
求めてしまう心だから
震える記憶と
かすかな望みとが響きあうのを
ただたいせつに感じたいから
月光螺鈿の庭で会おう
意識の奥に どうにか守りつづけてきた
まじりけない静けさを持ち寄って
ただひとときでも 寄り添いあおう
戻る 編 削 Point(2)