月光螺鈿の庭で/塔野夏子
 
月光螺鈿の庭で会おう

このかなしみは
悲しみでも
哀しみでもなく
ただ透きとおるばかりだから

ふたしかさの中でしか
結べない約束を
たぐりよせるほかに術はないから

月光螺鈿の庭で会おう

淡いもの 消えいりそうなものばかりを
求めてしまう心だから

震える記憶と
かすかな望みとが響きあうのを
ただたいせつに感じたいから

月光螺鈿の庭で会おう
意識の奥に どうにか守りつづけてきた
まじりけない静けさを持ち寄って
ただひとときでも 寄り添いあおう



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