今夜、この砂浜に座って/ホロウ・シカエルボク
亡骸の幻影を抱いて
流木の間を
記憶を縫い取るように歩く
靴底を受け止める
砂浜の感触は優しく
けれど
優しさというのは
時折
無関心と同じで
巡回機のようなカモメたち
薄曇りの空を
波はアルペジオの静寂
抜き取られた鎮魂歌の小節
棺の中には誰も眠ってはいなかった
もしも世界に
もっとも正しい時の基準というものが在るなら
それは満ち引きに違いないだろう
わたしたちは呼吸をする
だけどそのことを知らない
感覚が衰え
些事に追われることに慣れている
幾人かを見送ったあと
わたしは
胎内に焦がれるようになった
それは逃避や
母への
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