家路/梓ゆい
 
死んだ者たちが帰ってくる時刻だ。

透明な海が広がる南の方角から
白い空間と氷雪で覆われた北の方角から

生まれ故郷を目指して魂が向かうのは
死ぬ間際まで思い続けた家族に対しての心を
表しているかのようだ。

お父さん。お母さん。
無言でこぼれていた無念の涙。

「私は生きて、家に帰りたかった。」
戻る   Point(2)