ないものがあらゆるものを塗り潰す/ホロウ・シカエルボク
 
なかったけれど…中には誰も居なかった、博物館のように便器が配置されていた、個室のドアには番号が割り振られていた、それがなんのためなのかは俺には理解出来なかった、せっかくなので俺は小便をした、尿意がまったくなかったのにも関わらず、果てしなく小便が出た、それが済むと長いため息が出た、人生のすべてが排出されたような気がしていた―手を洗い外に出ると、幾つもの太陽がヒョウのように川面に降り注いでは物凄い湯気を立てて蒸発し続けていた、待てよ、と俺は独り言を言った…いまのいままで気づかなかったのだ、駅はもう失われてしまっている…。


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