ないものがあらゆるものを塗り潰す/ホロウ・シカエルボク
 

見知らぬ駅に降り立つ夢、駅の名も、電信柱に括りつけられたスピーカーから流れているローカルラジオの内容も、その時電話していた相手の名前も、その内容も、駅側のモニュメントのところで出会った年配の男のことも、なにもうまく思い出せなかった、「よくない兆候だ」とサイコドクター、ああ、ドクター、せめて苦くない薬を持たせてくれ…エニシダの木が群生した庭で食らい殺される幻想、ブルース・ディッキンソンが居ないころのアイアン・メイデンが流れていた、おれは棒についたアイス・クリームを二本持って、舐めるでもなく溶けるのを眺めているところだった、天使は古臭いゼスチャーで去って行き、悪魔が最新の装備でしなやかに現れた、悪
[次のページ]
戻る   Point(2)