行方知れずの抒情 一/ただのみきや
 
う痛くない
景色がざわついている
頭の中の真っ赤な河
耳鳴り 神楽囃しの笛
わたしは篝火
あなたの
うすあおい空
うすあおい命
寒々とした天国ね
わたしは鍋で煮詰めるだけ
ぎりぎりまで焦がさぬよう
相変わらず
お互いの耳朶咥えて
殺したいって
唇の血
分け合って
歴史が後から造られるように
記憶も自在に
溶かし合って
今日も小鳥みたい
あなたの眼は空を渡って逃げて往く
いつまでも
あなたの淵の奥深く
白い魚のまま住み続ける



                《2020年2月16日》







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