行方知れずの抒情 一/ただのみきや
 
暖冬

緩んだ根雪から枯草が
冬の裳裾を刺し留める
立ち姿も変わらずに
乾いた虚ろが季節を計る

雪を被って種子は眠る
殻を破って溢れ出て
日差しに青く繁る頃
穿つような骸も消える

いまだ死は生を模倣し
生もまた死を模倣する
濁った空は隠蔽する
幾重にも春を包み隠す




愚行回路

失くした鍵を探している
過失や怠慢をそう呼んで良いなら
ささやかな不運を口の中で持て余している

生活は続き鍵は新たに作られるが
ささやかな不幸は住み着いて
眼の裏や鼓膜の内側に卵を産む

今朝方失くした鍵の夢を見た
三つの鍵を通した銀のリ
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