おばあちゃんの知恵/パン☆どら
おばあちゃんの知恵は生きていて
呼吸をしていて
役に立つ
おばあちゃんが死んで
知恵は知識になった
ある日
知識が空から落ちてきて
若者が拾い上げた
若者は
知識を手に入れて
高慢という病気にかかる
イエス・キリストは
今も十字架の上に立つ
人々は信仰し名を唱えるが
ただ見上げるのみである
病気の若者が
恐れ多くも
十字架をよじ登る
撃たれて倒れるがいい
人々はそう吐き捨てた
若者は落ちて倒れ
人々に身包みをはがされる
死にかけた若者は
三途の川でおばあちゃんに会い
知識を知恵に変えてもらう
若者の病気は癒えて
十字架を手にする
若者はいつか
おばあちゃんになるだろう
人々はそのことに
まだ気づかない
※詩集「緋色の女」より
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