あの娘は灰色の中に消えた/ホロウ・シカエルボク
波を押し返そうとするみたいに冷たい風がひっきりなしに吹き付ける二月の海岸には僕ら以外人っ子ひとり居なくて、そのせいで僕たちは足跡ひとつついていない砂の上を多少の引け目を感じながらずっと、アイロニカルなリズムで歩いていた、空は薄暗くて、もうすぐ真昼だというのにすでに夜の始まりみたいだった、どうしてこんな日に、なんて思ったりもしたけれどそれはしかたがない、こういう場面には自然と然るべきシチュエーションが設定されるものだ、僕らが初めに望んだみたいな限りなく美しい晴天だったとしたら鋭利な刃物のように胸に食い込んだ悲しみはなかなか癒えることはないだろう、これは救いなんだ、僕はそう思うことにした、そしてそ
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