泥濘が何処までも続く/こたきひろし
蟻みたいに地道に生きてきた筈なのに
キリギリスみたいに何も蓄えられなかった
冬が訪れてきて
寒さがしみじみと身にも心にもこたえる
冬の先に春は待ち構えてない
季節は断崖に続いているだけ
そこにたどりついたら
もう落ちるしかない
運命だから
だけどその内に足下の雪は溶け出すかもしれない
運よく雪が溶けたら
途は泥濘に変わるだろう
そんなときに
過ぎた歳月を懐かしんで
立ち止まり振り返っても
泥濘に足が沈むだけ
行く手に待ち構える断崖は変わらない
蟻みたいに地道に生きてきた筈なのに
結果は
キリギリスみたいに何も蓄えられなかった
人生
1冊の童話程の値打ちもない
戻る 編 削 Point(3)