泥濘が何処までも続く/こたきひろし
 
蟻みたいに地道に生きてきた筈なのに
キリギリスみたいに何も蓄えられなかった

冬が訪れてきて
寒さがしみじみと身にも心にもこたえる

冬の先に春は待ち構えてない
季節は断崖に続いているだけ

そこにたどりついたら
もう落ちるしかない

運命だから

だけどその内に足下の雪は溶け出すかもしれない


運よく雪が溶けたら
途は泥濘に変わるだろう

そんなときに

過ぎた歳月を懐かしんで
立ち止まり振り返っても

泥濘に足が沈むだけ
行く手に待ち構える断崖は変わらない

蟻みたいに地道に生きてきた筈なのに
結果は
キリギリスみたいに何も蓄えられなかった

人生
1冊の童話程の値打ちもない


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