午後の羽/木立 悟
 



雪解け水は残雪に囲まれ
降りてくる空を見つめていた
曇はまだらに音を梳き
残雪の声を揺らしていた
水面の風 水底の風
誰も鳥を見なかった




風が小さく晴れ間を運び
手のひらをひとつ明るく点した
風は問いと問いの間にある
大きな羽を響かせていた
羽は訊いた
わたしと同じものはいるのですか
風は答えなかった



雪解け水をすくう手のひら
目の高さの光を映し
空の空と
地の空に
かがやいた










戻る   Point(1)