境界/ひだかたけし
 
天井が極端に低く薄暗さが空間全体を支配している
渦巻くような
いや実際
奥に向かい薄暗さが渦を巻いて〈闇〉となって生動していた
確かに異様だね 僕は彼女に言った
でしょう と彼女は頷いた

さっきの坂の下と此処は繋がっているのよ だから

彼女の声が遠くそう響き
その時にはもう彼女の姿は無かった

僕は部屋の中には入らずその家を後にした

自分はもうこの〈現〉に属していないのかもしれないな と思いながら


 
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