点の誘い・線の思惑 四 /ただのみきや
人形
ソフトビニールの人形
成形と着色により記号化された
その中空の薄っぺらな面立ちを愛でて
こころ通わせる人もいる
宿る魂はない
ただ見つめる眼差しや触れる手が
意味を孕ませて往く
記憶する限り最初に見た悪夢
それは人形に関するものだ
当時よくあった裸のこどもの人形が
何体かダンボール箱に入れられて
国鉄アパートの一階の玄関に捨てられていた
突然人形の顔がすべて一つ目に変わり
こっちを向いて何かしゃべり出す
わたしは一瞬にして恐怖が暴発し
人形の頭におもいっきりげんこつを落とした
すると人形の全身に細かなひびが広がって往く
そんな夢だった
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)