無題/朧月夜
戸外にいる気分を味わいたくって、
セブンイレブンから缶コーヒーを買ってきた。
ああ、街中には僕たちが一息つけるところなんでもうわずかしかない。
(そうでない人たちもいるのだろう)
君は君自身を取り戻したいと言って、泣く。
そんなとき、僕はどんな目をして君を見れば良いのだろう。
君は君自身を取り戻したいと言って、泣く。
それは、あの大きな空を取り戻したいと願ってのことなのだろうか……
でも、僕たちが後戻りはできないことを、皆が知っている。
もう、あの大きすぎる青空を取り戻すことは僕たちにはできない。
そのことは君が一番よく知っているはずで、
それだからこそ僕の前で泣いて見せたのだろう。
清らかな孤独の気分を味わいたくって、
セブンイレブンから、缶コーヒーを買ってきたんだ。
僕はやはり、僕自身からは離れれられないまま、
ただ君が泣いていたときの横顔を思い出していた。
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