幽霊船/朧月夜
 
 北の国には幽霊船がいるという。誰もそれを見たものはいないが、晴れた日には沖合に蜃気楼のようなものが立ち上がる。それが幽霊船だという。幽霊船は千の魂を積んでいく。幼くして亡くなった者、戦争で命を落とした者、疫病に倒れた者、天寿を全うした者。そこに境目は存在しない。幽霊船には操舵士も航海士もいない。何を動力にして動いていくのだろう。それも誰も知らない。幽霊船に乗り込んだ者は、その思いや理知を徐々に失っていく。あるいは死者たちの魂を動力にしているのが幽霊船なのか。時にはオーロラの光を受けて、時には流星群を浴びながら、幽霊船は生者たちがまだ見たことのない土地へと進んでいく。それは地球の裏側にある土地なの
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