平成にカムバックしたい/こたきひろし
近所の薬局の前の自動販売機。
明らかに避妊具を売っていた
その前を通るのはいつも深夜だったから街は寝静まっていて
暗闇の中にぼんやりとしか見えなかったのに。
ある日自宅アパートに帰宅すると彼女に言われた。
「あたし赤ちゃん出来たみたい。検査薬で調べたら陽性だったの」
薬局の前の自動販売機の中身とは何の因果関係もないのは
明らかだった。
その時彼の頭に思い浮かんだのは遊園地の大観覧車だった。彼は観覧車から向日葵の花を連想してしまう癖が治らなかった。向日葵の種子も一緒に。
平成にカムバックしたい。
彼は切に思う事がある。
彼女の恋愛ウィルスに感染して
潜伏期
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