夏みかん/385
ジャンプした
50センチ飛んだ
フェンスの向こうが見えた
夏みかんがたくさんなってた
助走した
フェンスに手をかけた
足はかけそこねた
ズリズ リル リ 滑り落ちた
もう一度助走した
フェンス思い切りつかんだ
そのまま自慢の腕力で
グイィ ッズイ 身体持ち上げた
勢いがつきすぎた
ゴロ リ ンゴロ 前転くずれた
縁側のおじさん僕を睨みつけた
夏みかんの汁いっぱいつけて
明日はみんな連れてこよう
もちろん見張りを立てるさ
近所の人に怪しまれぬよう
おじさんの留守中に
たくさん取りすぎたら
次に食べられないし
すぐばれてしまうから
ひとり一個だぜ
気がつくとおじさんが
夏みかん差し出して
ニヤニヤ笑ってた
僕もヘラヘラ笑いかえした
今日も夏みかんは
夕陽を浴びてあの日のまま
おじさんはもういない
僕はフェンスを飛び越えない
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