母に/立見春香
言葉というのは
光の反射のよう
どこでどう突き刺さるのか
わからない
まるで迷子の心細さなど
味わったことない顔をして
いつか母になったとき
むかし言った言葉に
埋め殺されそうになる
アナタナンテ、きらいデス
むかしいだいていた母の愛情は
どこに置き去りにしたのだったか
そういえばあのときの難破船の船底に
ずいぶんと傷んだマリア像が
倒れていたけれど
あの瞳をかたどった穴から
なにか言葉のようなものが
こぼれ落ちたのを
聞いた気がする
あれが最後の
慕情だったのかは
知らない
おそらく
誰も知らない
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