憎悪に似た朝/墨晶
うか、エンニオ・モリコーネだ。
「お腹空いたわ」
「状況を考えろ」
云ってしまってから、考えが変わった。女は俯いていた。
俺たちの存在など、鼠と何ら違いは無かったのだ。
「悪かった」
ヌイユ・ド・サラザンが僅かにあった筈だ。闇の中、壕(シェルター)に運び込んだトランクからガス缶、鍋、水の入ったボトルを取り出す傍で、女は隅のギャトー・ド・リ数個を指さし、
「あれはあしたに取っておきましょう あしたがあればのはなしだけど」
と、云った。
そう云う最後の晩餐だった。
Fin.
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