南風/
385
冒頭の一語が記せぬまま
引き出しに置き去りの手紙は
今日もまた描けずじまいだ
季節をいくつ跨いでも
春になると想い返す
花見など有るや無しやの理由で
会えるほどの距離だったと
まぶしく懐かしく
満開の桜なでる夜風はやさしい
頬寄せ幸せな二人に
紙コップ片手の人々に
遙か彼方その海で
さざ波とつながるか
言葉届かずとも
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