来訪者/帆場蔵人
貯水槽に落ちたとか、そもそも
顔すら思い出せない色白の少年
カエルのお墓はみずのなか
半袖半ズボンからのびた白い手足
斑ら地のカエルの頭が首から上に乗っている
月の寒い夜には境を越えて彼はやってくる
ぐるぐるぐると喉を鳴らしている
そら、道の暗がりから
手が出た、足が出た、白がはえる、はえる
カエルがはえる、犬が吠えた
いつものように足が歩みを止めれば
お前が吠えてくれるのだ
月の寒い冬の道にはまた暗がりだけが横たわり
いつものように私は犬にひかれて歩き始める
顔すら思い出せない幼い日の友だちの白い
面影はあの月の横顔のように満ちては欠け
またあらわれるだろう、思い出せない
笑みをたずさえて、境い目を漂う、貌
カエルのお墓はみずのなか
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